「武田信玄」と言えば「甲斐の虎」と恐れられた有名な戦国武将ですよね。特に、上杉謙信との川中島の合戦はあまりにも有名です。そして、政治家としても優れた手腕を発揮していた信玄には、確固たる哲学があったはずです。
それは、家紋にも表れていると考えられます。実際のところ、武田信玄は、どのような家紋を用いていたのでしょうか?
この記事では、武田信玄の家紋一覧を紹介しています。また、丸に武田菱の意味やムカデの旗印に込めた意義についても考察しているので、日本の歴史について興味にある人たちは参考にしてみてください。
武田信玄の家紋一覧
さて、武田信玄は、どのような家紋を使っていたのでしょうか?
結論から言えば、武田信玄はひし形のデザインを基調とする家紋を使っていました。これに関しては、『見聞緒家紋』で次のような逸話があったことに由来するといいます。
「見聞緒家紋」に、1050(永承5)年、前九年の役のとき賊の平定を住吉神社に祈願した際、神託によって拝領した楯無鎧(たてなしのよろい)のすそに割りびし文様があり、このよろいが武田氏の重宝となり、武田氏を象徴するものとなったので、その由来によって花びしと割りびしを家紋にするようになった、とある。「甲斐国志」もだいたい同意見である。
レファレンス共同データベースより引用(最終確認日:2024年4月13日)
ここでは、代表的な3つの家紋を紹介していきます。
その1 武田菱
第1に、武田信玄の代表的な家紋は武田菱です。
「菱形」は斜方形をかたどった意匠で菱の葉に似ていることから名付けられました。その原型は唐花(からはな)を菱形にデザインしたものだと言われています。また、「武田」の「田」の字をデザインしたものであるという説もあります。
なお、全体が菱形になるように四つの菱を並べたものが「割菱」です。現在は、通常の割菱と比べて四つの菱形の間隔が狭いものを「武田菱」と呼んでいます。
その2 花菱
第2に、「花菱」もまた武田家で使用されていた家紋です。
4つの花弁からなる唐花模様を菱形に描いた意匠になっています。古くから連続模様として使われており、平安時代の公家が使用していた装束や調度品にあしらわれていました。
花菱は可愛らしいデザインであることから武田家の女性が用いたとも言われています。武田菱と比べても洒落っ気のあるのも特徴的ですよね。
その3 陰花菱
第3に、陰花菱もまた武田信玄の家紋として知られています。
その見た目から明らかなように、花菱の輪郭だけを残した意匠になっています。そして、色が反転していることから「陰」という意味合いが与えられていると推察されます。これに関しては、現存する史料が少なく、謎の多い家紋となっています。
丸に武田菱は何を意味しているのか?
なお、武田菱を丸で囲った「丸に武田菱」は何を意味しているのでしょうか?
結論から言うと、丸に武田菱には、特別な意味が込められているわけではないと考えられます。強いて言えば、武田家との何らかの関わりがあることを示していると言えるでしょう。
この家紋を使っていた人物として有名なのは「高杉晋作」です。すなわち、高杉家は武田信玄と遠い親戚であるわけです。具体的には、甲斐国の清和源氏の系統であると言われています。なお、山口県観光サイトにて高杉晋作の詳細が書かれているので、興味がある人は確認してみてください。
ムカデの旗印に込められた意義
なお、武田信玄はムカデの旗印を掲げていました。その意義はどのようなものなのでしょうか?
ムカデの旗印には、「絶対に後に下がらない」という意味が込められています。武田家では百足衆という一団があり、武勇や軍才で選び抜かれた者が名誉の証として百足の旗指物を持つことができたと言われています。家紋と同じように、ムカデもまた武田家にとってシンボリックなものだったのです。
「ムカデ」と聞くと「気持ち悪い」という印象を持ちがちですが、後ろに下がることのない特徴から敵前で怯むことなく、前進する勇気の象徴として使われていたのです。また、見た目上の気味の悪さが相手に対して「ウッ」という拒絶を想起させるのにも一役を買っていたかもしれませんね。
宗教的な理由で菱が使われていた
武田信玄が菱形の家紋を用いたのは、住吉神社への祈祷が影響していたと言われています。いわゆる、信仰が当たり前だった時代ですから、家紋にもまじない的な意味合いが込められていた可能性が非常に高いと考えられるでしょう。
一族として掲げる大事な家紋ですから、そこには自ずから本人の思想信条が反映されていきます。その内容を紐解くことで、歴史的人物の生き様を感じることができるかもしれません。これを機会に、あなたの好きな人物が使っていた家紋について調べてみてください。
参考文献一覧
- 『決定版 知れば知るほど面白い!家紋と名字』綱本光悦 西東社
- 『面白いほどよくわかる 家紋のすべて 安達史人』日本文芸社
- 『家紋から日本の歴史をさぐる』インデックス編集部 ごま書房
- 『日本の家紋事典 由来と解説』大隈三好 金園社
- 『知識ゼロからの日本の家紋 入門』楠戸義昭 幻冬社
- 山口県観光サイトhttps://yamaguchi-tourism.jp/feature/shinsaku
- 刀剣博物館 https://www.touken-world.jp/search-calligraphy/art0004580/
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