みなさんは、梅の花を象った家紋があるのをご存知でしょうか?
もしかしたら、お近くの神社で見かけたことのある人たちもいるかもしれません。一般的に、「梅鉢」と呼ばれているのですが、改めて意味や由来はどうなっているのでしょうか?
この記事では、「梅鉢」について考察していきます。意味や由来、梅鉢を使っていた戦国武将も紹介しているので、歴史に興味がある人は是非参考にしてみて下さい。
梅鉢の意味と由来
梅鉢とは、梅の花をモチーフにした家紋です。5弁の花びらを星に見立てた円で描き、中央にさらに小円を置いています。花芯は三味線や太鼓のバチを表現していると言われています。
梅は8世紀頃、中国から輸入されました。早春に香り高く咲く白い花と風雅にとんだ樹姿が日本人にも愛好されるようになり、吉祥の植物として古代から重用されていました。季節や花への思いが紋に反映される点が興味深いですね。
梅鉢の家紋一覧
それでは、梅鉢の家紋には、具体的にどのような種類があるのでしょうか?
梅をモチーフにした家紋は150種類以上あると言われています。そのなかで、梅鉢の家紋に共通して言えるのは、丸の花弁を使っていることです。ここでは、代表的な梅鉢の家紋を4種類紹介します。
梅鉢の代表的な家紋
梅鉢 | 加賀梅鉢 | 剣梅鉢 | 星梅鉢 |
うめばち | かがうめばち | けんうめばち | ほしうめばち |
上記のなかでも、有名なのは「加賀梅鉢」です。これは、加賀百万石の領主前田家にゆかりのある家紋です。そのルーツは、「菅原道真にある」という説があります。前田氏も菅原道真の子孫であると称していますが、歴史的には不明であると解されています。
とはいえ、菅原道実が残した有名な詩に「東風(こち)吹かば匂い起せよ梅の花」とあるように、道真が「梅」に特別な感情を抱いていた可能性はあります。そのため、梅に関わる紋章を使っていたという考察は間違いではないかもしれません。
なお、加賀藩主前田家の藩祖である前田利家(まえだとしいえ)は幼少期から織田信長に仕えており、賤ヶ岳の戦いにより豊臣秀吉と和を結び、五大老となった一人です。梅鉢は前田利家の代表紋とされていますが、星梅鉢(ほしうめばち)だったという説もあるそうです。また、前田利家は桐紋と菊紋も使っていたと言われています。これは、豊臣秀吉から下賜されたためです。
梅鉢の家紋を使っていた武将
梅鉢の家紋を使っていた武将には、どのような人物がいるのでしょうか?
梅鉢の家紋を使っていた武将や有名人は以下のとおりです。
梅鉢の家紋を使っていた武将一覧
- 前田利家
- 筒井順慶
- 榎本武揚
- 吉村貫一郎
- 梅田雲浜
- 戸川秀安
- 副島種臣
- 平野国臣
先述のとおり、そもそもが平安時代に「学問の神様」として崇められている貴族・菅原道真を祀った天満宮に梅の神紋が掲げられたことが始まりだと言われています。その後、全国の天満宮に梅紋を使用することになったことで、使用する一族が増えたという解釈があります。
梅鉢の家紋に関わる苗字
なお、梅鉢の家紋を使っている苗字には、どのようなものがあるのでしょうか?
これに関しては、菅原、前田、竹尾、山田、林、近藤、佐藤、堀、吉原、河合、都築(つづき)、岡、中村、矢木、青木、白木、豊田、大谷、安藤、各務、加賀美、三井、村山、花村、美濃などの苗字が梅鉢の家紋を使っている可能性があります。
地域的には、三河国や美濃、管公の生まれ故郷である大和国(奈良県管原村)に梅紋を家紋とする一族が多くなっています。上記に羅列されている苗字に該当する人たちは一度、苗字を確認してみることをおすすめします。
梅にまつわる家紋もたくさんある
梅の家紋と言えば「梅鉢」ですが、その他にも梅をモチーフにした意匠がいくつもあるのです。もしかしたら、あなたの一族も菅原道真と何らかの関係があるかもしれません。
先祖が武士でなかったとしても、日本の場合は農民も家紋を使っていました。すなわち、日本人のほとんどが何らかの家紋を持っている可能性があるわけです。
これを機会に自分の家紋を調べてみると、歴史との意外なつながりを感じられる可能性があります。興味のある人たちは以下の記事もご覧ください。
参考文献一覧
- 『決定版 知れば知るほど面白い!家紋と名字』綱本光悦 西東社
- 『面白いほどよくわかる 家紋のすべて 安達史人』日本文芸社
- 『家紋から日本の歴史をさぐる』インデックス編集部 ごま書房
- 『日本の家紋事典 由来と解説』大隈三好 金園社
- 『知識ゼロからの日本の家紋 入門』楠戸義昭 幻冬社
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