原爆資料館の黒い爪とは?色が変化した理由やその他の後遺症を解説

原爆資料館の黒い爪とは?色が変化した理由やその他の後遺症を解説

広島平和記念資料館に訪れるにあたって、被曝者から生えてきたと言われている「黒い爪」について気になっている人たちもいるかもしれません。

実際に、館内には「黒い爪」というタイトルで実物の爪が展示されており、生々しい姿に驚きを隠せないという方もいます。また、その背景が分からずに疑問を抱えたまま、その場を立ち去ったという人もいるのではないでしょうか?

この記事では、原爆資料館に展示されている黒い爪の概要についてまとめています。また、色が変化した理由も紹介しているので、興味のある人たちは参考にしてみてください。

目次

原爆資料館の黒い爪とは?

原爆資料館に展示されている「黒い爪」とは、被曝者から生えてきたと言われている後遺症の記録です。広島平和記念資料館には、当時26歳の濱田義雄さんが被曝して火傷を負った左手の中指と薬指から伸びた「黒い爪」が展示されています。

広島平和記念資料館HPより引用

濱田さんだけに限らず、当時、原爆で被曝した人たちの中には、黒い爪が生え続ける症状を訴えた人たちがいたと言われています。命に直接的な影響がなかったとしても、体の一部が奇形化するのは心理的にも辛かったに違いありません。

詳しく知りたい方は、広島平和記念資料館平和データベースをご覧ください。

原爆で爪の色が変化するのはなぜ?

そもそも原爆の影響で黒い爪が生えるのは、どうしてなのでしょうか?

結論から言えば、原爆から発生した放射線の影響であると考えられます。具体的には、被曝によって爪母の細胞に深刻なダメージが与えられたことによってメラニン色素が異常に生成されたり、爪の組織が本来的に持っている成長パターンが乱されたりした結果であると推察されます。

その他の後遺症

黒い爪が生える以外にも、被曝の後遺症は存在します。

具体的には、放射線に曝されることで生じる健康被害には、次のようなものがあると言われています。

被曝による健康被害一覧

急性放射線症候群(ARS)

  1. 皮膚症状
    • 皮膚の紅斑、脱毛、火傷のような症状。
  2. 消化器症状
    • 嘔吐、下痢、腹痛。
  3. 造血器症状
    • 白血球、赤血球、血小板の減少。これにより感染症や出血のリスクが増加。
  4. 神経症状
    • 頭痛、めまい、意識障害。

長期的な健康影響

  1. がんのリスク増加
    • 白血病:特に急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病のリスクが増加。
    • 甲状腺がん:特に小児被曝者においてリスクが高い。
    • 乳がん:特に女性被曝者においてリスクが増加。
    • 肺がん、胃がん、大腸がん:その他の固形がんのリスクも増加。
  2. 心血管疾患
    • 高線量の放射線被曝により、心血管疾患のリスクが増加することが示されています。
  3. 白内障
    • 放射線被曝により、水晶体の白濁が進行し、視力低下の原因となる。
  4. 甲状腺機能異常
    • 放射線による甲状腺の損傷により、甲状腺機能低下症や甲状腺結節、腫瘍のリスクが増加。
  5. 遺伝的影響
    • 動物実験では遺伝的影響が確認されていますが、人間においてはまだ直接的な証拠は少ない。ただし、被曝者の子孫において、遺伝的影響が懸念されている。
  6. 発育障害
    • 小児期に被曝した場合、成長障害や知的発達の遅れが報告されています。

精神的・社会的影響

  1. 精神的健康問題
    • 被曝後の不安、PTSD、うつ病などの精神的健康問題。
  2. 社会的スティグマ
    • 被曝者に対する社会的スティグマや差別が、精神的および社会的影響を及ぼすことがある。

妊娠・胎児への影響

  1. 流産・死産
    • 妊娠初期に高線量の放射線に被曝した場合、流産や死産のリスクが増加。
  2. 先天性異常
    • 妊娠中の被曝により、先天性異常や出生時低体重のリスクが増加。

生々しい記録と向き合う意味

広島や長崎にある「原爆資料館」には、核兵器がもたらした生々しい記録が残っています。訪れた人たちのなかには、涙を流したり、目を背けたくなったりするなど、ショックを受けてしまう方もいます。実際、戦争で変容した人間の苦しそうな姿を目の当たりにして平然としていられるほうが不自然です。

グロテスクな記録に対して嫌悪感を抱いた結果、戦争に触れること自体がトラウマになってしまうケースもあるようです。この事実は原爆資料館の存在意義を揺るがす大きな問題と言えるかもしれません。すなわち、現実を闇雲に直視させるのではなく、目的に資する見せ方を選択する必要があるわけです。

戦争の当事者たちが高齢化して、日本の悲惨な歴史を身を以て語ることのできる人たちは確実に減ってきています。だからこそ、平和教育のあり方をもう一度、顧みる時期がきたと言えるのかもしれません。

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この記事を書いた人

DEEP JAPAN QUEST編集部は日本文化に関する総合情報メディアを運営するスペシャリスト集団です。DEEP JAPAN QUEST編集部は、リサーチャー・ライター・構成担当・編集担当・グロースハッカーから成り立っています。当サイトでは、日本文化全般に関わる記事を担当しています。

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