日本の国旗と言えば、白地に赤い丸の「日章旗」です。日本人であるならば、だれもが知っていることだと言えます。しかしながら、その歴史を知る人は少なく、昔と今の違いについて気になっている人たちもいるはずです。
この記事では、「日本国旗は昔と今で異なるのか?」という疑問について言及しています。また、旭日旗と日章旗の違いも説明しているので、日本の国旗に興味がある人たちは参考にしてみてください。
日本国旗は昔と今で異なるのか?
さて、日本の国旗は昔と今で異なるのでしょうか?
結論から言えば、日本の国旗は今も昔も白地に赤い丸の日章旗です。厳密に言えば、日章旗を国旗として定めたのは、1999年に施行された『国旗及び国歌に関する法律』です。それまでは、明治3年に制定された『商船規則』を除いて「日の丸」を法的に使用するルールは存在しなかったのです。
実は、『国旗及び国歌に関する法律』ができたタイミングで日本国旗のデザインは若干、変更されています。その意味では、日本国旗は昔と今でほんの少しだけ異なるというのが正確な情報と言えるでしょう。これに関しては、withnewsが実施した大臣官房総務課の取材で以下のような記述されています。
――当時の日の丸と、国旗になった日の丸で違いはありますか?
「現在使われている日の丸の縦横比は、およそ2対3ですが、当時は7対10だったそうです。また、丸い『日章』の中心についても、現在は旗の中心部分にあるのに対し、当時は旗竿をつける側に向かって100分の1ずれていたようです。日章がきれいな丸であることや、その直径が縦の長さの5分の3であることなどは変わっていません」
withnews『五輪エンブレムより影響大? 日の丸のデザイン、実は変わっていた』より引用(最終確認日:2024年3月23日)
旭日旗は昔の日本国旗ではない
なお、「旭日旗が昔の日本国旗である」と誤解している人たちもいます。これまで旭日旗が日本の国旗として使用された事実はありません。
けれども、19世紀から戦前の日本では、旭日旗は軍の旗としても使用されていました。すなわち、朝鮮や中国の一部を占領する際に、日本軍が掲げていたのは「旭日旗」だったのです。そのため、旭日旗に対するアレルギー反応を示す国も存在します。
特に、韓国は旭日旗を「戦前の日本の軍国主義」を象徴するものだとして強い拒絶を表明しています。
一方で、外務省によれば、旭日旗は「特定の政治的・差別的主張を表現するものではない」という立場を取っています。以下、公式HPからの引用です。
旭日旗の意匠は日章旗同様、太陽をかたどっており、大漁旗や出産・節句の祝い旗等、日本国内で現在までも広く使用されているものであり、特定の政治的・差別的主張である等の指摘は当たらない。政府として、韓国を含め国際社会に向けて、旭日旗の掲示が政治的宣伝にならないという考えを累次の機会に説明しており、今後ともそうした説明を継続していきたいと考えている。
外務省『旭日旗』より引用(最終確認日:2024年3月19日)
2020年の東京オリンピックでも、会場で旭日旗が掲げられていたことに対するバッシングが起きています。そこに、「どのような意味が込められていたのか?」は定かではありませんが、旭日旗は政治的軋轢を生み出しやすいセンシティブなトピックなのです。
旭日旗と日章旗の違い
それでは、改めて、旭日旗と日章旗では、具体的に何が違うのでしょうか?
ここでは、大きく3つの視点から両者の相違点を具体的に説明していきます。
その1 デザインが異なる
第1に、旭日旗と日章旗ではデザインに違いがあります。
改めて、画像で比較してみると、その差は一目瞭然です。
旭日旗は日の丸から16本の赤い線が広がっており、日章旗のシンプルなデザインよりも勢いを感じさせる模様になっています。赤色の部分が大きいので、血気盛んなイメージを持ちやすいかもしれませんが、暴力的な意味合いは元からデザインに含まれていません。
その2 名前が違う
第2に、旭日旗と日章旗では読んで字の通り名前が違います。
旭日とは朝方に昇る太陽を意味しています。一方で、日章とは太陽を象徴する意匠を示しています。言葉の抽象度から考えると、日章旗はフラットな意味合いが強いと考えられます。逆に、旭日旗は「夜明け」を想起させるものですから、自然とメッセージ性が強くなります。
バングラデシュの国旗に使われている太陽がイギリスからの独立を表現しているように、明確な意味を与えやすいのです。
その3 印象が違う
第3に、旭日旗と日章旗では、その印象が大きく異なります。
先述のとおり、旭日旗は過去の軍国主義を想起させるものとして使用それ自体を問題視する国もあるのです。また、過激な右翼団体が旭日旗を掲げて暴走している風景を見たことのある人たちからすると、心なしか「怖い」印象を抱いている場合もあるでしょう。
一方で、日本の国旗として広く親しまれている日章旗は特定の政治的分脈に位置づけられない中立的な印象を持っています。もちろん、旭日旗は暴力的な意図が込められて制作されたものではありません。その時代に、その文脈で使われていただけなのですが、わかりやすい大きな違いであると言えます。
昔も今も使われているのは日章旗
昔も今も日本国旗として使われているのは日章旗です。法的に位置づけられたは1999年と日本の歴史から見ると、最近の話なのです。なお、旭日旗は「昔の日本国旗」としてのイメージが強いかもしれませんが、事実ではありません。誤解しないように注意してください。
ちなみに、旭日旗は今でも使われています。具体的には、大漁旗や出産・節句の祝い旗に用いられているのです。無論、過去の軍国主義を想起する人たちもいるので、次第に使われなくなる可能性も0ではありません。
実際、「日本の歴史と伝統として次代に継承する価値があるのか?」と問われると、ほとんどの日本人はよくわからないというのが本音だと思います。ただ、旭日旗は朝日に昇る太陽を象徴した意匠であることを踏まえると、あくまでも暴力的な意味合いは歴史や政治が生み出したイメージに過ぎないのです。
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