2025年7月5日に日本を巨大津波が襲うという噂が、SNSや一部の都市伝説コミュニティで拡散されています。TikTokなどでは「2025年7月5日4時18分に隕石が落ちて日本が滅亡する」といった書き込みまで見られ、不安に感じている人もいるようです。
本記事では、この「2025年7月5日 津波」に関する噂の発端と広がり、AIシミュレーションと称される予測の内容を検証し、さらにデマが広まる心理や背景、専門家や行政機関の見解を紹介します。最後に、デマに惑わされないために私たちができることをまとめます。
「2025年7月5日 津波」噂の発端とネット上での広がり
この噂の発端は、漫画家・たつき諒さんが1999年に出版した予知夢の記録本『私が見た未来』に遡ります。たつき諒さんの本の表紙には「大災害は2011年3月」と記されており、実際に12年後の2011年に東日本大震災が発生したことから「予言が的中した」と話題になりました。
そしてその本では「本当の大災難は2025年7月5日にやってくる」という趣旨の予言も語られており、これが現在流布している噂の元ネタとなっています。
この予言めいた情報は都市伝説好きの間で徐々に注目を集めました。やがてスピリチュアル系の発信者たちがホピ族の予言など世界の神秘的な話まで絡めて語り始め、それがきっかけで「2025年7月5日には何かが起こる」という話がSNS上で一気に拡散しました。
TikTokでも多くのインフルエンサーが言及し、ついには地上波のテレビ番組でも取り上げられるまでに至っています。特に「隕石が落下して日本が滅亡する」「南海トラフ巨大地震が起きる」など具体的なシナリオを伴って語られるため、その度合いに不安を煽っています。
2025年7月5日の津波はどこまで来る?
SNS上では、「AIがシミュレーションした結果」と称して津波の到達範囲や規模を示す動画や画像が出回っています。しかし、その内容は荒唐無稽と言わざるを得ません。噂では、2025年7月5日未明(午前4時18分)にフィリピン海で海底が突然破裂し、その衝撃で四方に巨大津波が発生、日本を含む太平洋沿岸に押し寄せるとされています。
津波の高さは東日本大震災(2011年)の津波の3倍以上にもなるという極端な予想で、日本列島の南半分が壊滅的な被害を受けるというのです。噂の中には「北海道と山梨県だけが安全」といった具体的な地名まで挙げるものもあり、北海道は震源から遠く津波の影響が少ない、山梨県は土地全体が内陸で標高が高いから大丈夫といった主張まで見られます。
しかし、このようなシナリオには科学的根拠がありません。まず、仮に隕石衝突や海底火山の大噴火が起きて津波が発生するケースを考えても、それを事前に正確な日付で予知することは不可能です。NASAなど各国の宇宙機関は地球近傍天体を監視していますが、2025年7月に地球へ衝突するような大型隕石の情報は現時点で報告されていません。
また、日本政府や地震学者が警戒する南海トラフ巨大地震は今後30年以内に高い確率で発生すると予測されていますが、その発生日を特定することはできません。南海トラフ地震について政府が公表している被害想定でも、「日本が消滅する」ような極端な事態は想定されていません。
例えば、内閣府の想定では南海トラフ巨大地震が発生した場合、津波の最大高は高知県で34メートルなど地域によって異なり、太平洋沿岸各地で大きな被害が出るものの、日本列島全体が水没するといった規模ではありません。あくまで架空のフィクションと考えるべきでしょう。実際、防災の専門家たちもこの噂に対して「根拠がない」と否定的であり、後述するように行政機関も注意を呼びかけています。
【デマ注意】なぜ津波の噂が広まったのか?心理と背景を分析
では、なぜこのような荒唐無稽な津波の噂がここまで広まってしまったのでしょうか。その背景には、人々の心理的な不安と情報環境が影響しています。
まず、人は大災害の可能性を前にすると、少しでも情報が欲しいと考えます。しかし確実な情報が得られない状況では、不安な心理が先行し、根拠の薄い話でも信じてしまう傾向があります。災害デマ研究によれば、情報が不足し不安が高まると、噂や流言が生み出されやすくなることが指摘されています。
今回のケースでも、「たつき諒の予言が当たった」という話が一人歩きし、それに様々な都市伝説が付加されていく中で、多くの人が不安に駆られて情報を共有してしまったと考えられます。
また、SNS時代ならではの拡散のしやすさも見逃せません。TikTokやTwitter(現X)では、ショッキングな内容ほど注目を集めバズりやすい傾向があります。「○月○日に大地震が来る」「日本が沈む」といった刺激的なフレーズは、人々の興味と恐怖を引き付け、半ばパニック的に共有されてしまうのです。
投稿者の中には善意で「注意喚起」のつもりで拡散する人もいれば、注目を集めたいだけの人もいます。いずれにせよ、そのような善意のリポストや面白半分の拡散が結果的にデマに信ぴょう性を与えてしまう側面があります。
歴史的にも、根拠のない終末予言や災害予言が流行した例は少なくありません。有名なものでは、1970年代に日本で大ブームとなった「ノストラダムスの大予言」があります。そこでは、「1999年7の月に空から恐怖の大王が降り、人類は滅亡する」と謳われ、多くの人々(特に当時の子供たち)が信じていました。しかし、ご存知の通り1999年7月に人類滅亡は起こらず、予言は外れました。ノストラダムスの例からも分かるように、終末論的な予言はしばしば注目を集めますが、現実には大抵が杞憂に終わっています。今回の「2025年7月5日」の噂も、科学的にはノストラダムスと同じく信憑性に欠けるものです。
防災の専門家・行政機関による正式な見解
この噂に対して、防災の専門家や行政機関は一貫して「根拠のないデマ」であると否定しています。気象庁は公式見解として「日時と場所を具体的に特定した地震や津波の予知情報はデマと考えられる」と明言しており、「○月×日に△△で大地震が起きる」といった話を耳にしても心配する必要はないとしています。現代の科学では地震の発生時期や場所を事前に正確に予測することはできず、当然ながら「2025年7月5日に巨大津波が起こる」という予言も科学的根拠がありません。
実際、2024年には類似のデマがSNS上で問題となりました。気象庁が南海トラフ地震に関する臨時情報(巨大地震注意)を発表した直後、SNS上で「○月○日に南海トラフ地震が起きる」といった無数の書き込みが確認され、不安を感じた人々もいました。

これに対し、気象庁は記者会見で「日付を特定した地震予知情報はデマである」と明確に否定し、注意を呼びかけました。また、政府も「根拠のない噂に惑わされず公式情報に基づいて冷静に対応してほしい」とコメントしています。実際、官房長官も記者会見で「不安をあおる根拠のないデマが流布する可能性がある」として国民に冷静な行動を呼びかけました。
専門家たちは、むしろ特定の日付の予言よりも「いつ地震や津波が起きてもおかしくない」という日本の現実に目を向けるべきだと強調します。日本は地震国であり、明日でも来年でも大地震が起こり得る土地柄です。大切なのは、根拠のない予言に怯えることではなく、日頃から正しい知識に基づいて防災対策を講じておくことだと指摘されています。
まとめ|デマに惑わされないために今後できること
今回の「2025年7月5日津波」の噂は、多くの人に不安を与えました。しかし現時点で信頼できる機関からそのような予告は一切出ておらず、専門家の見解では単なるデマであると結論付けられています。では、私たちが今後このようなデマに惑わされないために何ができるでしょうか。
- 公的機関の情報を確認する: 大地震や津波に関する情報は、気象庁や各自治体の防災情報に基づくようにしましょう。例えば、緊急地震速報や津波警報は気象庁から正式に発表されます。また、内閣府や各都道府県の防災サイトでは、最新の災害情報やハザードマップを公開しています。根拠不明なSNSの書き込みよりも、まずは公式発表や信頼できる報道機関の報道を確認する習慣を持つことが重要です。
- 情報の真偽を見極める: SNSで流れてきた情報を鵜呑みにせず、「誰が発信しているのか」「出典は何か」をチェックしましょう。今回の噂のように、「AIが予測した」「有名な予言者が言っている」といった文言は、一見もっともらしく聞こえますが、その背後に科学的データや公式な根拠があるかを疑ってみてください。少しでも怪しいと思ったら、専門家や公的機関の見解を調べてみることが大切です。
- デマを拡散しない・惑わされない: 不安なときほど、人に教えたくなったりSNSで共有したくなったりするものですが、事実確認のできない情報を拡散することは二次被害を生む恐れがあります。善意であっても結果的にデマ拡散の一端を担いかねません。また、恐怖心につけ込んだ詐欺や悪徳商法(高額な防災グッズを売りつける等)が出てくる可能性もあります。不確かな情報には冷静に対処し、周囲にも「公式情報ではないらしいよ」と冷静な視点を共有するよう努めましょう。
- 日頃からの備えを徹底する: 最後に、一番重要なのは日頃の防災対策です。巨大地震や津波は“いつか”は起こり得るものですから、特定の予言日だけを怖れるのではなく常に備えておくことが肝心です。非常用持ち出し袋の準備、避難経路の確認、家族での安否確認方法の話し合いなど、やるべきことは沢山あります。こうした備えは無駄になることはなく、いざという時に自分や大切な人の命を守る力になります。
根拠のない噂に翻弄されるのではなく、正しい知識と備えによって冷静に災害に向き合いましょう。デマに惑わされない目を養い、確かな情報に基づいて行動することで、私たちは未知の災害にもより強く対応できるはずです。



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