日本らしいデザインを考えるにあたって、家紋の意匠を参考にしようと考えている人たちもいるかもしれません。しかしながら、「勝手に使うと問題になるかもしれない」心配している人たちもいるはずです。事実、既存のクリエイティブを使用するにあたって権利関係を意識することは大切です。
この記事では、「使ってはいけない家紋はあるのか?」という疑問について言及しています。日本の家紋を利用しようと考えている人たちは参考にしてみてください。
使ってはいけない家紋はあるのか?
さて、一般人が勝手に使ってはいけない家紋はあるのでしょうか?
結論から言えば、許可なく使ってはいけない家紋は存在します。
具体的には、商標登録されている家紋は勝手に利用すると、相手の権利を侵害する行為として損害賠償を請求されるおそれがあるので注意が必要です。特に、オリジナルTシャツなど売り物を制作するときは、商標登録の有無をチェックしましょう。
とはいえ、自分で調べるのは難しいのが実情です。そのため、弁理士などの専門家に相談することをおすすめします。もし、お金をかけずに調べたいならば、特許情報プラットフォーム「j-platpat」という検索サービスで確認してみましょう。
けれども、商標を言語化するのは至難の技です。したがって、「j-platpat」を使っても網羅的にチェックできるとは限らないので気を付けましょう。
商標登録されている家紋の一覧
なお、当メディアで把握している商標登録済み家紋は以下のとおりです。
商標登録されている家紋の一覧
武家名 | 家紋の名称 |
---|---|
伊達家 | 竹に雀・仙台笹 |
島津家 | 丸に十字 |
真田家 | 六文銭 |
武田家 | 四菱 |
楠木正成 | 菊水 |
豊臣家 | 五七の桐 |
明智光秀 | 桔梗 |
後北条氏 | 三つ鱗 |
蜂須賀家 | 蜂須賀卍 |
小早川家 | 三つ巴 |
上記に該当する家紋を権利者の許可なく商業的に使用してはいけません。万が一、使用しなければいけない事情があるときは法律に依拠した対応を必ず取ってください。
菊の紋は勝手に使ってよいのか?
いわゆる、天皇家御用達の菊の紋は勝手に使ってもよいのでしょうか?
これに関しては、微妙なところです。明治時代は太政官布告によって菊の紋を許可なく利用することは禁止されていました。しかし、今では禁止令は存在しておらず、一般人でも菊の紋を使用しても問題はないと考えられます。
とはいえ、天皇家に迷惑をかけるような使い方は許容されるわけがありません。あくまでも社会通念上、許容される範囲において使用しても問題はないことに留意しておくべきです。
ただ、なかには、「天皇家に対する不敬だ」と反発する人たちも存在します。そのため、「どうしても使いたい」という特別な事情がないのであれば、「菊の紋」を使用しないほうが色々と安全であると言えるでしょう。
桔梗の家紋は使ってはいけないのか?
加えて、桔梗の家紋は使わないほうがよいと言われることがあります。
その理由は、明智光秀が使っていた家紋であるがゆえに、織田信長と縁のある一族にとって「裏切り」の象徴であるという評価が下されているからです。
とはいえ、今のご時世になって、江戸時代の権力関係が一般社会に持ち込まれているわけではありません。加えて、歴史は勝者の物語ですから、私たちが今知っていることの多くは事実を元にする想像も含まれています。すなわち、織田でも、明智でも、どちらか一方が正しいわけではないのです。
桔梗の家紋は美しい意匠です。むしろ、裏切りという汚名を着せられてかわいそうな植物なのです。
社会のルールに則ろう
家紋と言えども、商標登録されている場合は勝手に使ってはいけません。
そこには、法律という社会のルールが適用されます。それを無視すると、思ってもみない損失が発生するので注意しなければいけません。
もしわからないことがあれば、特許に関する専門家に頼りましょう。この分野に明るくない状態で判断しても正しくない選択を取ってしまいかねません。そのような危険に陥らないためにも、正確なアドバイスを求めることを心がけましょう。
参考文献一覧
- 『決定版 知れば知るほど面白い!家紋と名字』綱本光悦 西東社
- 『面白いほどよくわかる 家紋のすべて 安達史人』日本文芸社
- 『家紋から日本の歴史をさぐる』インデックス編集部 ごま書房
- 『日本の家紋事典 由来と解説』大隈三好 金園社
- 『知識ゼロからの日本の家紋 入門』楠戸義昭 幻冬社
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