MBTI診断(Myers-Briggs Type Indicator)は、人々の性格を16種類に分類する性格テストです。近年、このMBTI診断が日本でも若者を中心に大きなブームとなっています。もともとユングの心理学理論を基にアメリカで開発された手法ですが、SNSを通じた情報拡散や韓国でのブームの影響で、日本でも急速に人気が浸透しました。
実際、ある調査ではMBTIを知ったきっかけが「SNS」という人が半数以上にのぼり、韓国のアイドルグループが公開したMBTI結果が話題となったことが日本での流行に大きく関係していると報告されています。自己分析ツールとして「当たっている」「役に立つ」と評価する声も多く、コミュニケーション改善やキャリア選択に活用され始めています。
本記事では日本人に多いMBTIタイプのランキングを最新データから読み解き、男女別の割合や性格傾向、そして日本文化との関連性について考察します。さらにMBTIタイプ別の働き方・コミュニケーションの特徴にも触れ、最後に今後のMBTI診断の活用について展望します。
日本人に多いMBTIタイプランキング(最新データ)
まず、日本人に多いMBTI性格タイプのランキングを確認しましょう。2023年の最新データ(16Personalitiesによる約7.9万人の日本人回答者の集計)によれば、日本では全16タイプがバランスよく存在しているものの、直観型(N)かつ感情型(F)のタイプが上位を占めています。以下は日本人における各タイプの割合ランキングです。
順位 | MBTIタイプ(日本語名) | 日本人の割合 |
---|---|---|
1位 | INFP(仲介者) | 16.44% |
2位 | ENFP(運動家) | 13.79% |
3位 | INTP(論理学者) | 7.19% |
4位 | ISFJ(擁護者) | 6.81% |
5位 | INFJ(提唱者) | 6.79% |
6位 | ESFJ(領事) | 6.74% |
7位 | ISFP(冒険家) | 6.74% |
8位 | ESFP(エンターテイナー) | 6.01% |
9位 | ENFJ(主人公) | 5.59% |
10位 | ENTP(討論者) | 5.18% |
11位 | INTJ(建築家) | 3.69% |
12位 | ISTJ(管理者) | 3.57% |
13位 | ESTJ(幹部) | 3.39% |
14位 | ISTP(巨匠) | 2.87% |
15位 | ESTP(起業家) | 2.62% |
16位 | ENTJ(指揮官) | 2.57% |
このように、日本ではINFP(仲介者)とENFP(運動家)が突出して多く、それぞれ全体の約16%と14%を占めています。一方で最も少ないタイプはENTJ(指揮官)で約2.6%と、トップのINFPとは6倍以上の開きがあります。とはいえどのタイプも一定数存在しており、「自分のタイプが日本にほとんどいないのでは?」という心配は無用でしょう。実際、最多のINFPでも16%程度であり、残り84%は別のタイプです。したがって、どのタイプであっても必ず周囲に同じタイプの仲間がいると考えられます。
日本人全体の傾向として、内向型(I)が約54%で過半数を占め、感情型(F)は約68.9%と論理型(T)より圧倒的に多いことが分かります。また柔軟に対応するタイプ(P)は約60.85%で過半数を占め、計画的なタイプ(J)より多くなっています。
直観型(N)と感覚型(S)については日本ではNがやや優勢で、世界平均と比べると日本人はより「直観的で感受性豊か」な傾向があるようです。実際16Personalitiesの分析でも、日本の回答者は全体的に「やや内向的(+3%)・直観的(+9%)・感情的(+12%)・順応的(+8%)」**と、世界平均よりI・N・F・P寄りであると報告されています。
一方、世界全体の一般的な傾向も参考にすると興味深い違いが見えてきます。世界で最も多いとされるタイプはISTJ(管理者)で約11~14%ですが、日本ではISTJはわずか3.57%に過ぎず主要タイプではありません。逆に、日本で多数派のINFPやENFPは世界平均では各4~5%程度とされ、これほど高い割合は日本特有です。またリーダー気質のENTJ(指揮官)は世界平均並みにいる国もありますが、日本では2.5%と極端に少ないことも特徴です。このように、日本人のMBTI分布には文化や社会環境の影響が色濃く表れていると考えられます。
男女別のMBTI割合と特徴
次に、男女別のMBTIタイプ傾向について見ていきます。性格タイプそのものは男女問わず現れますが、統計的な割合には性別による偏りがみられることが知られています。日本の調査データおよび世界的な傾向を踏まえると、以下のような違いが指摘されています。
- EとI(外向・内向):女性の方が男性より**外向型(E)の割合がやや高く、男性は内向型(I)**が高い傾向があります。女性の方がコミュニケーションや協調を重視しやすく、男性は自立や自己主張を重んじる傾向が関係しているかもしれません。ただし、社会的役割による振る舞いも影響するため、一概に生まれつきの差とは言い切れない点も重要です。
- NとS(直観・感覚):直観型(N)と感覚型(S)は性別で大きな差がないと報告されています。興味や経験によってN/Sの傾向は左右されやすく、男女差より個人差の範囲が大きい項目です。
- TとF(思考・感情):女性は感情型(F)が多く、男性は思考型(T)が多いという傾向が顕著です。一般に女性は感情や価値観を重視し共感を示す人が多く、男性は論理や分析を優先しがちだとされます。この違いは対人関係にも表れ、女性の方が相手に寄り添い、男性は客観的に状況を見る傾向として現れることがあります。
- JとP(判断・知覚):女性は計画的な判断型(J)の割合が高く、男性は柔軟な知覚型(P)が多い傾向です。女性は秩序や安定を求める傾向、男性は自由や変化を好む傾向が背景にあるとも考えられます。例えば学校の宿題を「計画的に片付ける」タイプは女性に多く、「ギリギリになってから一気に片付ける」タイプは男性に多い、といったイメージです。
さらに、具体的なタイプ別では男性に多いタイプ・女性に多いタイプが存在します。統計によると、ISTPやINTP、INTJといった分析型・実践型(SP型・NT型)のタイプは男性比率が高く、ISTPはその約75%が男性、INTPも約73%が男性というデータがあります。
同様に、ENTJやESTPなども男性に多い傾向です。逆にISFJ、ENFJ、ESFJ、INFJといった協調型・理想主義型(SJ型・NF型)のタイプは女性比率が高く、ISFJの約71%が女性、ENFJも約69%が女性という結果が報告されています。
このように、男女で偏りが見られるタイプもありますが、あくまで統計上の傾向であり個人差が大きいことに留意が必要です。
近年では、こうした性別による性格傾向の偏りは徐々に小さくなりつつあるとも言われます。。社会の価値観が多様化し、男女ともに協調性と論理性の両方が求められるようになったことで、性格面でも昔ほど「男性らしさ」「女性らしさ」にとらわれない傾向が出てきています。実際、「男だからこうあるべき」「女だからこう振る舞うべき」という固定観念が薄れ、それぞれの個性が重視されるにつれ、MBTIタイプの男女差も縮まっていると考えられます。
日本人に特に多いMBTIタイプの性格傾向と文化的背景
日本人に特に多いMBTIタイプとして注目すべきなのは、前述のランキングで上位を占めたINFPとENFPの2タイプです。これらは日本で突出して高い割合を占めており、世界平均と比べても際立った特徴となっています。ここでは、これら日本人によく見られるタイプの性格傾向と、その背景にある日本の文化要因について考察します。
INFP(仲介者)
日本人の約16.44%を占め、最も多いタイプです。INFPは繊細な感受性と深い共感力を持ち、強い理想主義と独自の価値観を抱きつつも周囲との調和を重んじる平和志向の性格です。この「自分の理想を追いつつ、和を乱さないよう気を配る」という気質は、日本の伝統的な価値観である「和を以て貴しとなす」(調和を尊ぶ精神)と見事に合致しています。
実際、INFPタイプが日本で多い背景には日本特有の文化的要因が深く関わっていると分析されており、空気を読み他者の気持ちを慮る日本人らしさが反映された結果だと言えます。つまり、日本人は人と衝突するよりも相手の立場を想像し、協調することを好むため、そのような資質を持つINFP型が増える傾向にあるのです。
加えて、INFPは想像力が豊かでクリエイティブでもあり、自分の内面世界を大切にします。日本では古くから文学や芸術において繊細な感性が尊重されてきた背景もあり、物静かでも内に情熱を秘めたINFP気質は居心地の良いものなのかもしれません。
職場においても、INFPの人々はその優れた共感力と創造的思考を活かし、チーム内の人間関係を円滑にする潤滑油のような役割を果たすことがあります。メンバー間の意見の対立を和らげたり、新しい視点のアイデアを提案したりと、まさに組織でも「仲介者」として真価を発揮するタイプと言えるでしょう。
ENFP(運動家)
日本人の約13.8%を占め、INFPに次いで2番目に多いタイプです。ENFPは外向的で社交的でありながら同時に繊細な感受性も持ち合わせています。情熱的で活力に満ちた性格は周囲にポジティブな影響を与え、組織やグループを明るく活性化してくれます。
日本の職場やコミュニティでは、自ら盛り上げ役となって雰囲気を良くし、皆を巻き込んでいくムードメーカーはとても貴重です。ENFP型の人々はまさにその役割を担うことが多く、新しい企画の立ち上げや組織内外のコミュニケーション促進役として重要な存在となっています。
ENFPが日本で多い理由として考えられるのは、現代日本社会が求める適応力と創造力にマッチしたタイプだからでしょう。急速に変化する社会の中で、新しい発想で道を切り開き周囲を巻き込む力は重宝されます。ENFPは既成概念にとらわれない豊かな創造性と想像力を持ち、従来になかったアイデアで組織に「新しい風」を吹き込むタイプです。
日本ではかつて年功序列や慣習を重んじる風土が強かった一方、近年は革新性や多様性を受け入れる動きもあります。そうした中で、ENFPのような情熱と柔軟さを兼ね備えた人物像が増えているのかもしれません。
日本でINFP・ENFPといった共感力や創造性を持つタイプが多い一方で、権威的・指揮型のタイプは少ない点も文化的に興味深いところです。例えばENTJ(指揮官)タイプはリーダーシップや戦略的思考に優れ「ボス型」の性格と言われますが、日本では先述の通り全体の2.5%程度と稀です。これは、日本の文化が欧米に比べて出る杭より和を重視する傾向が強く、強い主導権を振るう人が少ない(または表に出にくい)ことと関係があるでしょう。
日本では周囲との調和を大切にするタイプが多い反面、リーダー気質のタイプは世界平均と比べ少ないのです。もっとも、ENTJ型など少数派のタイプも決して価値が低いわけではなく、その個性ゆえに組織の中で独自の貢献を果たす存在となっています。
まとめと今後の展望(MBTI診断の活用方法)
日本人のMBTIタイプ分布を総合して振り返ると、内向的で共感力の高いタイプが多く、和を重んじる日本文化が性格傾向に表れていることが分かりました。
一方で、データには現代の日本社会の変化も映し出されています。若い世代を中心に直観型や柔軟なタイプが増えているのは、新しい価値観や多様性を受け入れる時代の流れと言えるでしょう。
もちろん、日本人全体が同質的というわけではなく、多様な性格タイプが共存しています。その多様性こそが社会や組織の原動力であり、異なるタイプ同士がお互いの強みを活かして補い合うことが大切だという点も強調されました。
では、今後MBTI診断をどのように活用していけるか展望を述べます。まず個人レベルでは、MBTIは自己理解のツールとしてますます利用されるでしょう。実際、Z世代の調査では他者の性格を判断する際にMBTIを参考にする人が7割以上にのぼり、友人関係や職場でのコミュニケーションに役立てている実態があります。
今後も学生が進路選択の参考にしたり、就活生が自己PRを考える材料にMBTIタイプを使うケースが増えるかもしれません。企業や教育現場でも、チームビルディング研修でMBTIを取り入れたり、相互理解を深めるワークショップで活用される可能性があります。すでに外資系企業などでは社員研修にMBTIを用いる例もあり、日本企業でも導入が進めば職場のコミュニケーション活性化や適材適所の人員配置に寄与するでしょう。
ただし、MBTI診断を活用する上で留意したいのは、「タイプに人を当てはめすぎない」ことです。MBTIはあくまで傾向を示すもので、人それぞれの個性を完全に決めつけるものではありません。
性格タイプは環境や成長によって変化する可能性もありますし、どのタイプにも多様な表れ方があります。したがって、今後MBTIがさらに普及していくとしても、「あなたは○○型だからこうだ」というステレオタイプな決めつけは避け、対話のきっかけや自己洞察のガイドとして上手に使うことが重要です。
MBTI診断の今後の展望としては、日本においてはこのブームが一過性の流行にとどまらず、自己理解・他者理解を深める身近なツールとして定着していく可能性があります。
かつて血液型性格診断がコミュニケーションの話題づくりとして親しまれたように、MBTIも会話の糸口として定着しつつありますが、それに加えて実践的な自己啓発ツールとして価値を持っている点が特徴です。今後はSNS世代だけでなく幅広い年代でMBTIへの関心が高まり、職場や学校で世代を超えてお互いのタイプを共有し合うなんて光景も増えるかもしれません。
最後に、MBTI診断を通じて得た自分のタイプや周囲のタイプの知識は、相互理解と尊重のための手がかりになります。日本人の多いタイプ・少ないタイプの特徴を知ることは、自分の強みを活かすヒントになったり、違うタイプの人と協働するときの参考になります。ぜひ今後もMBTI診断を上手に活用しつつ、多様な性格が織りなす人間関係を楽しむことが大切です。その先には、個々人が持つ資質を最大限に活かし合える社会や組織づくりという未来が開けていることでしょう。
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