戦艦大和を今作ったらいくらになる?設計図の有無や現代技術で再現できる可能性

戦艦大和を今作ったらいくらになる?設計図の有無や現代技術で再現できる可能性

日本海軍の最高傑作とも称される戦艦大和。世界最大の戦艦として知られるこの巨大戦艦は、昭和の技術力の結晶でありながら、わずか3年半の生涯を終えました。特攻作戦の一環として最期の出撃をした大和に、多くの特攻隊関係者は共感と敬意を抱いています。

本記事では、この伝説的な戦艦を現代に蘇らせるとしたらいくらかかるのか、技術的に可能なのか、そして設計図は現存しているのかについて、詳細に考察していきます。

本記事の試算はあくまでも考察に過ぎません。

目次

戦艦大和とは?

戦艦大和は、排水量約64,000トン、全長263メートルを誇る世界最大の戦艦でした。呉海軍工廠で建造され、1941年12月16日に就役し、1945年4月7日に坊ノ岬沖海戦で沈没しました。搭載されていた45口径九四式46cm3連装砲塔は史上最大の艦載砲で、一発の砲弾は1.5トンという驚異的な重さを持ち、その射程は約42キロメートルに達しました。

大和の建造費は当時約1億3,780万円と言われています。この金額は当時の国家予算の約3分の1を占めていたとされ、現在の貨幣価値に換算すると約1兆円に相当するとも言われています。大和型戦艦は第三次海軍軍備補充計画(マル3計画)の一環として計画され、大和と武蔵の2隻の建造に2億7,102万円の予算が割かれました。

特攻隊との関連で言えば、大和の最期の出撃である「天一号作戦」は本質的に特攻作戦でした。燃料は片道分しか積まず、沖縄に到達したら艦を座礁させ、最後の一人まで戦う予定でした。この精神は特攻隊と共通するものがあり、「知覧特攻平和会館」には大和の模型も展示されています。大和の乗組員約3,300人のうち、生還できたのはわずか276人とされており、約3,000人が戦死しました。これは特攻隊の犠牲に匹敵する規模です。

戦艦大和を今作ったらいくらになる?

戦艦大和を現代に再現するとしたら、いったいいくらかかるのでしょうか。これを考えるには、材料費、労務費、技術的難易度を考慮する必要があります。

まず、原材料に関して考えましょう。大和の主な材料は特殊鋼鉄でした。現代では当時使用されていた「陸奥鉄」と呼ばれる特殊鋼は少量しか製造されていません。しかし、現代の技術では当時より高品質の鋼鉄を製造できるため、材料費自体はそれほど大きな問題ではないでしょう。

労務費については大きな差があります。大和建造時は安価な労働力を大量に使用しましたが、現代日本の造船業の労務費は当時と比較にならないほど高騰しています。YouTube動画「戦艦大和の建造費を徹底的に検証してみた!」によれば、現代の労務費で換算すると、大和の建造には1,250億円以上かかるとされています

また、大和の主砲製造には特殊な技術が必要でした。46cm砲の製造には幅5m、高さ5m、重さ219トンの巨大な旋盤機が使用されていました。この旋盤機は奇跡的に現存しているとされますが、これを扱う職人の技術は失われています。現代の最新鋭イージス艦「まや」級の建造費が約1,700億円であることを考えると、大和を忠実に再現した場合、最低でも5,000億円、技術的困難を考慮すると1兆円を超える可能性もあります

海軍の造船専門家によれば、大和型戦艦の建造予算は当時は排水量比で見ると「安上がり」だったとされています。マル3計画では大和型は国家機密上の理由で3万5,000t戦艦として予算請求されていましたが、実際は6万4,000tでした。排水量は1.83倍に増えましたが、予算は1.26倍しか膨らんでいないということになります。

しかし現代では、このような「コストパフォーマンス」は期待できません。理由としては、失われた技術の再現コスト、現代の安全基準や環境規制への対応、そして何より一隻限りの特殊艦艇を建造するための設備投資が膨大になるためです。

戦艦大和を現代技術で再現できる可能性

戦艦大和を現代技術で再現することは理論上可能ですが、いくつかの重大な技術的ハードルが存在します。最大の障壁は46cm主砲の製造です。この主砲は「ロストテクノロジー」とも呼ばれ、現代では再現が困難とされています。その理由は主に三つあります。

一つ目は旋盤機の問題です。主砲を製造するには特殊な旋盤機が必要でした。奇跡的にこの機械自体は現存していますが、その使用方法に関するノウハウは継承されていません。

二つ目は素材の問題です。主砲に使用された鋼材「陸奥鉄」は現在ではほとんど製造されていません。代替材料は存在しますが、オリジナルと全く同じ性能を出せるかは不明です。

三つ目は職人技術の問題です。主砲の製造には高度な職人技術が要求されました。特に、鋼材を削る際に発生する摩擦熱による劣化を防ぐため、適切なタイミングでの冷却と切削が必要でした。この技術を持つ職人はもはや存在しません。

「そもそもなぜこのような技術が失われたのか」という疑問に対しては、単純に「不要になった」という答えがあります。戦後、大砲よりもミサイルやロケット弾の需要が高まり、また日本の技術力向上により、半分の口径で大和の主砲と同程度の威力を発揮できるようになったのです。

大和の主砲建造は「失われた技術」というよりも「捨てられた技術」と言えるかもしれません。当時は必要だったこの技術も、時代の変化とともに継承する意義が失われたのです。

一方で、現代技術ではより効率的に建造できる部分もあります。コンピュータ制御による精密加工、溶接技術の向上、3Dモデリングによる設計精度の向上などは、建造プロセスを大幅に改善する可能性があります。

現代では、大和のような大型戦艦よりも、より小型で機動力のある艦艇や、ミサイル技術を駆使した戦闘システムが主流となっています。それでも、大和の建造技術の一部は現代の造船技術に継承されています。例えば「ブロック工法」は現代の大型船舶建造の基本技術となっています。

戦艦大和の設計図は残っているのか?

戦艦大和の詳細な設計図は、敗戦前後にその多くが焼却処分されました。これは軍事機密保持のためと、占領軍に技術が流出することを防ぐためでした。そのため、完全な設計図は現存していないと考えられています

しかし、部分的な図面や記録は残されています。例えば、呉市の「大和ミュージアム」には復元された図面や模型が展示されています。これらは残された断片的な資料や元設計者・乗組員の証言をもとに再構成されたものです。興味深いことに、大和の姿をとらえた現存写真は非常に少ないとされています。

これは、その存在、特に46cm主砲の搭載が最高軍事機密であったので、建設時から秘匿に力が注がれたためです。設計図が完全には残っていないことが、大和を現代で再現することをさらに困難にしています。技術者たちは残された情報から推測して設計を再現する必要があり、それには不確実性が伴います。

一方で、現代技術を駆使した調査により、沈没した大和の詳細なデータが収集されています。水中考古学的手法により、沈没した大和の3Dマッピングが行われ、艦の構造についての新たな知見が得られています。

このような調査と残された資料を組み合わせることで、かなり正確な大和の姿を再現することは可能ですが、細部の設計や材料の正確な配合など、失われた情報も多く存在します。

5,000億は超えるかもしれない

戦艦大和を現代に再現するとしたら、その費用は少なくとも5,000億円、場合によっては1兆円を超える可能性があります。これは単に物価上昇だけでなく、失われた技術の再構築コスト、現代の労務費、そして一隻限りの特殊艦艇を建造するための設備投資が要因です。

技術的には、船体構造自体は現代技術で再現可能ですが、46cm主砲のような特殊技術は「ロストテクノロジー」となっており、完全な再現は極めて困難です。これは技術的に不可能というより、継承する必要性が失われたことで技術が途絶えたためです。

設計図については、敗戦時に多くが焼却処分されたため完全な形では残っていませんが、部分的な図面や記録、元関係者の証言、そして沈没船の調査データを組み合わせることで、かなり正確な復元が可能になっています。

特攻隊に関心を持つ方々にとって、大和は特別な意味を持つ存在です。最期の出撃は実質的な特攻作戦であり、約3,000人の乗組員が命を落としました。彼らの犠牲は特攻隊員と同様、祖国のために命を捧げた証です。

大和を再建するという構想は時折浮上しますが、その膨大なコストと技術的課題、そして何より現代における軍事的意義の乏しさから、実現する可能性は極めて低いと言わざるを得ません。しかし、大和が体現した日本の技術力と精神は、現代の造船技術や工業技術の中に脈々と受け継がれています。

それは特攻精神と同様、形を変えながらも日本人の心の中に生き続けているのかもしれません。大和は単なる戦艦ではなく、日本の技術と魂の象徴として、これからも私たちの記憶に残り続けるでしょう。

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この記事を書いた人

DEEP JAPAN QUEST編集部は日本文化に関する総合情報メディアを運営するスペシャリスト集団です。DEEP JAPAN QUEST編集部は、リサーチャー・ライター・構成担当・編集担当・グロースハッカーから成り立っています。当サイトでは、日本文化全般に関わる記事を担当しています。

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